漢検を受ける高齢者たち。私も何かしらの学習を続ける年寄りになりたい

田舎暮らし

漢字検定2級に挑戦してみようという事になった。4月に申し込みを済ませると、5月にはそんな事などすっかり忘れて本を読みふけっていた。普段から読書はするものの、今年の5月は読書しかしていないというほど読んだ。

さて6月になると漢字検定の協会からメールが届いた。「もうすぐ検定日だぞ、受検表を送るからな」というようなことが書かれている。

そうだ、忘れていた。このままじゃヤバいよ、絶対ヤバいよ。

あわててテキストをひらき勉強を開始するも、まだ「読書脳」のままの私の左手には読みかけの本が握られていた。なんなら、次に読む本もその次に読む本も用意してある。アニメ“ぼのぼの”に登場する、『しまっちゃうおじさん』に今こそおいでいただき、私から本を引き剥がして、しまっちゃってほしい。本でも、私自身でも、どっちでも良いからとにかくしまっちゃってほしい。

そんな願いが叶うわけもなく、受検日は刻一刻と近づいてくる。

漢字検定というのはただ漢字の読み書きができりゃ良いってモンでもなく、熟語の構成や同音異義語や誤字訂正など、頭の痛くなる出題が色々ある。中でも四字熟語は、2級になると聞いたことも無いようなのが次々現れる。

なかば絶望的な心境に陥りながらも出来るかぎり勉強した。(たまに読書もした。)

検定当日、様々な年齢層の受検者がテキスト片手に真剣な面持ちで開場を待っていた。最後の1週間はみっちり勉強したものの、模擬テストで合格点が取れたのは2回だけである私の自信はさらに薄れていく。

試験を終え、自己採点をすると154点だった。合格ラインは160点。落ち込む私の隣では、夫が自分のテストを見てニヤニヤしている。合格点が取れたらしい。おめでとう!準1級で待っててくれ。

検定料も時間も無駄にした!悔しい!と嘆く私に、夫は「学びは無駄にならないよ。四字熟語いっぱい知れたじゃん」と言った。本当にそう思う。

合格することはできなかったが、勉強をして良かったことがふたつある。

ひとつは、『酔生夢死』という四字熟語を知った事だ。酔生夢死とは「ダラダラと無駄に生きること」と言う意味。本来ネガティブな言い回しで使われる言葉だが、私はこれが大好きである。

 そしてもうひとつは、60代や70代の人も受検していると知れた事だ。いくつになっても学習意欲があること、実際に検定を受けに来るという行動力。その姿に胸打たれた。私の前の席には、おじいさんと女子中学生が隣同士に座っていた。素敵な光景だなぁと思った。

私もつねに何かしらの学習を続ける年寄りになりたい。田舎に移住してただのんびり過ごすのも決して悪くないが、せっかくならこの自然に囲まれた豊かな環境で学び続けようじゃないか。

ネガティブにダラダラ過ごすのではなく、ポジティブにダラダラと無駄に生きてやろう。

このお話は、『30歳からの田舎暮らし~伊豆に移住しました~: 四季報ちゅんぶん2023夏号』に収録されています。

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