※この話は『スローライフとお金のちょうどいい距離間: 資本主義の木陰で』に収録されています。
ドウタクの話
弥生時代。稲作がはじまった時代。
米を備蓄できるようになったことで、冬の飢えを凌げるようになった。
おかげで人間は爆発的に増殖することに成功したが、蓄えた米は争いと格差の元になった。
弥生時代の光と闇。
稲作は食文化だけではなく、人々の生き方まで変えてしまったのだ。
弥生時代で思い出すのが、銅鐸。ドウタク。
謎めいていて、用途がよく分からない。
楽器かもしれないし、警鐘かもしれないし、祭具かもしれない。
何でも、豪族と呼ばれる権力者が有り余る米を貯め込み、古代中国や朝鮮からドウタクをはじめとする青銅器を買いこんでいたらしい。
サイズは、10センチ程度。それが徐々に巨大化していき、最終的には1メートル以上の大きさになった。
ドウタクがどんな目的で作られたにせよ、実用的なものからシンボル的なものに変わっていったことだけは確かなようだ。
なんだか、現代とそっくりだ。
使いもしない機能がたくさん付いたスイス製の腕時計を買う人。
東京じゃ走りにくいだろうイタリア製のスポーツカーを買う人。
生きるのに必要以上の金を手に入れ、その事実を物質化したくてたまらない。
何千年経っても、人間の本質は変わらないようだ。
だけど、そんな豪族たちのおかげで今日も経済は回る。彼らの納めてくれた税金は、公共事業費や治安維持費となって国を支えてくれている。
僕が田舎でのんびりスローライフが送れているのも彼らのおかげ。
彼らが育んでくれた立派な大樹に守られているのだ。
本当にありがたい。
豪族万歳。万歳。
もし豪族に出会ったら、感謝を込めて高級スポーツカーを褒め称えようと思う。 「めっちゃ速そうでカッコいい車っすねぇ」と。
ヤリョによる解説
ここで言う「豪族」たちを、否定する人も多い。
でも、彼らからたくさんの恩恵を受けていることも忘れないでほしい。
彼らが頑張ってくれているから、僕たちは静かに暮らせるのだ。
だからこそ「資本主義の木陰でスローライフ」なのである。
そんな想いから、この話を書いた。
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『スローライフとお金のちょうどいい距離間: 資本主義の木陰で』には、全14話が収録されています。
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