2020年2月、僕たち夫婦は静岡県伊豆の別荘地で、広い庭付きの中古物件を650万円で購入しました。
人生で一番高価な買い物でしたが、今では「一番安い買い物でもあった」と心から感じています。
不動産や建築はまったくの素人。だからこそ、最低限の確認ポイントを徹底的に調べ、自分たちの目で確かめることで、結果的に最高の物件に巡り会えました。
この記事では、僕たちが実際にチェックした12のポイントを、より深く、具体的に解説していきます。これから中古住宅の購入を考えているあなたの、後悔しない家選びの助けになれば幸いです。
◆筆者紹介◆

地方移住を機に、生活コストを抑えることで会社員を卒業。今はのんびり田舎暮らしをしながら、1日4時間ほどの在宅ワークで生計を立てています。
この経験を本にまとめました↓

素人が中古物件を選ぶ際に最低限チェックしたい12のこと
中古住宅の内覧は、まさに「宝探し」。見た目の綺麗さだけでなく、その家が刻んできた歴史を読み解く作業です。ここでは、僕たちが実践したチェックポイントを「建物外部」「建物内部」「立地・環境」の3つのステップに分けて、より詳しく解説します。
〈チェックポイント1〉基礎がしっかりしているか
家のすべてを支える「基礎」。ここがダメなら、どんなに素敵な家も台無しです。家の周りをぐるっと一周し、コンクリート部分にひび割れ(クラック)がないか、自分の目でしっかり確認しましょう。
ひび割れには、放置しても比較的安全なものと、構造上の問題を抱えている危険なものがあります。その見分け方が、素人でも後悔しないための第一歩です。
具体的には、ひびの「幅」と「向き」に注目してください。
| ひび割れの種類 | 特徴 | 危険度 | 対処法 |
|---|---|---|---|
| ヘアークラック | 幅0.3mm未満の髪の毛のような細いひび。コンクリートの乾燥収縮が原因のことが多い。 | 低 | 緊急性は低いが、念のため記録しておく。 |
| 構造クラック | 幅0.3mm以上、深さ4mm以上のひび。 地盤沈下や地震など、構造的な問題の可能性がある。 | 高 | 専門家(ホームインスペクター)に診断を依頼すべき。 |
| 横方向のひび | 地面と平行に入るひび。施工不良や鉄筋の錆びが原因の可能性があり、注意が必要。 | 中〜高 | 幅が小さくても、専門家の意見を聞くのが賢明。 |
僕たちの家にもクラックがありましたが、シャーペンの芯(約0.5mm)を差し込んでみたら、表面だけで奥まで入らなかったため、ヘアークラックだと判断し安心しました。これは簡易的な方法ですが、一つの目安になります。
〈チェックポイント2〉地盤がしっかりしているか(家の傾き)
基礎に問題がなくても、その下の地盤が傾いていては元も子もありません。長い年月を経て、家が傾いている可能性があります。
内覧時には、水平器アプリをスマホにインストールしていくと便利です。リビングなど、広い空間の中央で床の傾きを確認してみましょう。なければ、ビー玉を床に置いて転がり具合を見るのも有効な方法です。
家の傾きは、住んでいると三半規管に影響して気分が悪くなることも。また、地盤沈下が原因の場合、修正には莫大な費用がかかるケースもあります。
〈チェックポイント3〉雨漏りの跡がないか
雨漏りは建物の寿命を縮める大敵です。天井の隅や壁に、シミや変色がないか注意深く見てください。
特に見落としがちなのが、押し入れやクローゼットの天井です。普段あまり見ない場所だからこそ、雨漏りのサインが隠れていることがあります。僕たちの家も、押し入れの天井に雨漏りの跡がありました。前の所有者に確認したところ、過去に雨漏りがあった事実が判明(幸い、すでに修復済みでした)。このように、見つけた点は正直に質問することが大切です。
窓のサッシ周りも要注意ポイント。壁紙が剥がれていたり、黒ずんでいたりする場合、結露だけでなく雨水が侵入している可能性も考えられます。
〈チェックポイント4〉排気口(換気口)が多いか
特に、僕たちが購入したような森の中の物件は、湿気がこもりやすくなります。湿気は木材を腐らせ、カビの原因にもなるため、建物の健康状態を保つ上で換気は非常に重要です。
家の基礎部分や外壁に、十分な数の排気口(換気口)が設置されているか確認しましょう。数が少ない、あるいは物で塞がれているような場合は、床下の湿気が抜けにくい環境かもしれません。これは、建物の耐久性に関わる重要なポイントです。
〈チェックポイント5〉土地の利権関係は大丈夫か

建物だけでなく、その土地に関する権利関係も必ず確認が必要です。
- 接道義務: その土地が、建築基準法で定められた幅員の道路に接しているか。接していないと再建築ができない「再建築不可物件」の可能性があります。
- 私道負担: 目の前の道路が私道の場合、その維持管理の費用負担や、通行の権利関係はどうなっているか。
- 境界線の確認: 隣地との境界は明確になっているか。特に田舎では境界が曖昧なことも多く、後々のトラブルの原因になります。
他人の土地を通らないと家に入れない「囲繞地(いにょうち)」や、駐車場の出入り口だけが公道に面しているような物件も存在します。不動産会社の担当者に、公図や測量図を見せてもらい、しっかりと説明を求めましょう。
〈チェックポイント6〉ご近所の方はどんな人か
どんなに素晴らしい物件でも、ご近所付き合いがうまくいかなければ、快適な生活は送れません。これは、都会でも田舎でも同じです。
内覧時には、勇気を出してご近所の方に挨拶をしてみましょう。田舎なら、畑仕事をしている方を見かけることも多いはずです。僕たちも「この辺りへの引っ越しを考えている者です」と声をかけました。
その土地の「良いところ」や「少し不便なところ」など、住んでいる人ならではのリアルな情報を聞けるチャンスです。また、その時のご近所さんの反応や人柄も、物件選びの重要な判断材料になります。
僕たちの場合は、挨拶をしたら「あら、いいところよー!」と、採れたてのピーマンやキュウリ、トマトまでいただきました。この温かい歓迎が、この場所に決める大きな後押しになったのは言うまでもありません。
〈チェックポイント7〉ハザードマップに問題はないか

近年、自然災害のリスクはますます高まっています。購入を検討している物件が、どのような災害リスクを抱えているのか、事前に必ず確認しましょう。
各自治体が公開しているハザードマップで、洪水、土砂災害、津波などの危険区域に含まれていないかを確認できます。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」なら、全国の情報をまとめて検索できて便利です。
不動産取引の際には、重要事項説明で説明が義務付けられていますが、自分自身でも事前に確認しておくことで、より安心して判断ができます。
〈チェックポイント8〉耐震性と築年数
日本に住む以上、地震への備えは欠かせません。建物の耐震性を判断する上で重要なのが「建築確認日」です。これは、建物を建てる前に役所に提出された日付のことで、登記簿謄本などで確認できます。
| 耐震基準 | 建築確認日 | 想定される地震 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 旧耐震基準 | 〜1981年5月31日 | 震度5強程度で倒壊しない | 大規模な地震に対する規定はない。 |
| 新耐震基準 | 1981年6月1日〜 | 震度6強〜7でも倒壊しない | 現在の中古住宅選びの一つの目安。 |
| 2000年基準 | 2000年6月1日〜 | 新耐震基準をさらに強化 | 木造住宅において、地盤調査の事実上の義務化や接合部の金物指定、壁の配置バランスなどが追加された。 |
最低でも1981年6月1日以降の「新耐震基準」を満たしているかは確認しましょう。 これを満たしていない物件は、耐震補強工事が必要になる可能性が高く、その費用も考慮に入れる必要があります。
〈チェックポイント9〉修繕やリフォームの必要性
中古住宅は、購入価格が安い分、修繕やリフォームが必要になるケースがほとんどです。内覧時には、「もしこの家を買ったら、どこにいくらくらいかかりそうか」という視点を持つことが重要です。
特に費用がかさみやすいのは以下の箇所です。
- 屋根・外壁: 塗装や葺き替え、張り替えが必要か。足場を組むため、一度に行うと高額になりやすい。
- 水回り設備: キッチン、浴室、トイレ、給湯器など。設備の寿命は10〜15年程度が目安。
- シロアリ対策: 前回の防蟻処理から5年以上経過している場合は、再処理を検討。
これらの修繕費用をあらかじめ概算し、物件価格と合算して総予算を考えることが、後悔しないための秘訣です。リフォーム費用もまとめて借りられる「リフォーム一体型ローン」や、自治体の補助金制度なども調べておくと良いでしょう。
〈チェックポイント10〉火災や災害時の安全性
万が一の事態を想定しておくことも大切です。特に、以下の点を確認しましょう。
- 接する道路の幅: 消防車や救急車がスムーズに入れるか。道が狭い、行き止まりなどの場合は注意が必要です。
- 隣家との距離: 隣家との距離が近いと、火災の際に延焼のリスクが高まります。
- プロパンガス・浄化槽: 都市ガスや公共下水道が整備されていないエリアでは、これらの設備の状況やメンテナンス費用も確認が必要です。
〈チェックポイント11〉断熱性と快適性
古い中古住宅は、現在の基準に比べて断熱性能が低い場合があります。断熱性が低いと、夏は暑く冬は寒いため光熱費がかさむだけでなく、結露によるカビの発生など健康面にも影響を及ぼす可能性があります。
内覧時には、窓が単層ガラスかペアガラス(複層ガラス)かを確認したり、壁や天井に断熱材が入っているか不動産会社に聞いてみましょう。もし断熱性能に不安がある場合は、断熱リフォームの費用も予算に含めて検討することをおすすめします。
〈チェックポイント12〉周辺環境と利便性
最後に、建物だけでなく、その周辺環境が自分のライフスタイルに合っているかを確認します。
- 日当たりと風通し: 時間帯を変えて何度か訪れ、日当たりや風通しの変化を確認するのが理想です。
- 騒音や匂い: 平日と休日、昼と夜で、周辺の交通量や騒音、匂いなどがどう変わるか。
- 生活利便施設: スーパー、病院、学校、駅など、自分たちの生活に必要な施設までの実際の距離や道のりを歩いて確かめてみましょう。
どうしても不安な時はプロを頼る(ホームインスペクション)

ここまでセルフチェックの方法を紹介してきましたが、「やはり素人の目だけでは不安だ」と感じる方も多いでしょう。その場合は、専門家による住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することをおすすめします。
家は人生で最も高い買い物の一つ。数万円の診断費用を惜しんで、後から数百万の修繕費に泣くことのないように、賢明な判断が求められます。
費用は、目視による基本調査で5万円〜7万円程度が相場です。 床下や屋根裏への進入、専用機材を使った調査などのオプションを追加すると費用は上がります。 依頼するタイミングは、購入申し込み後から売買契約前がベストとされています。
注意点として、「無料で診断します」という業者は、高額なリフォーム契約を前提としている場合があるため、診断は中立的な立場の専門家に依頼するのが鉄則です。
値段交渉も忘れずに
どんなに気に入った物件でも、よく観察すれば何かしらの欠点や、修繕が必要な箇所が見つかるはずです。それらを客観的な根拠として、値段交渉に臨みましょう。
例えば、「給湯器が古く交換が必要」「壁紙に修繕が必要な箇所がある」といった点を具体的に指摘し、その修繕費用の見積もりを根拠に交渉すると、売主も納得しやすくなります。
僕たちの場合も、雨漏りの跡(修繕済み)や設備の古さを指摘し、30万円の値下げに成功しました。中古物件の価格は「言い値」であることが多く、交渉の余地は十分にあります。
最後は自分の直感を信じる
たくさんのチェックポイントを挙げてきましたが、最終的に大切なのは「この家に住みたいか」という自分の気持ちです。
データや条件も重要ですが、内覧した時の「空気感」や「居心地の良さ」といった直感も無視できません。中古物件は、新築と違って一点もの。まさに「出会い」です。予算と条件の範囲内で「ここだ!」と感じる物件に出会えたなら、その直感を信じてみるのも良いでしょう。
【よくある質問(Q&A)】
Q1:プロの住宅診断はどこで頼めばいいの?
A1:「ホームインスペクション + 地域名」で検索すると、地域の診断士を探せます。特定の建築会社や不動産会社に属さない、第三者性の高いNPO法人などに所属する診断士を選ぶと、より中立的な診断が期待できます。
Q2:築何年以内なら安心ですか?
A2:一概には言えませんが、1981年6月1日以降の「新耐震基準」、できれば2000年6月1日以降の「2000年基準」で建てられているかが一つの目安になります。 ただし、築年数が浅くてもメンテナンス状況が悪ければ問題が発生することもあるため、築年数だけで判断せず、必ず建物の状態を自分の目で確かめることが重要です。
Q3:購入後に欠陥が見つかったらどうなりますか?
A3:2020年4月の民法改正で「瑕疵(かし)担保責任」から「契約不適合責任」に変わりました。 これは、引き渡された物件が契約内容と異なる場合(例:雨漏りしないと説明されたのに雨漏りした)、買主が売主に対して修繕の請求や代金の減額、契約解除などを求めることができる権利です。 ただし、売主が個人の場合は、この責任を免除する特約が付いていることもあります。契約前には、契約不適合責任に関する取り決めを必ず確認しましょう。
【まとめ】この方法で、素人の僕でも大好きな家を手に入れられた!!

中古住宅選びは、情報戦であり、体力戦でもあります。しかし、正しい知識を持って、ポイントを押さえて見ていけば、不動産の素人でも「掘り出し物」を見つけることは十分に可能です。
まずはたくさんの物件を見て目を養い、気に入った物件が見つかったら、今回ご紹介した12のポイントを一つひとつ確認してみてください。そして、不安が残るなら専門家の力を借り、最後は自分の「好き」という気持ちを大切にする。これが、僕たちがたどり着いた後悔しない家選びの結論です。
中古住宅には、新築にはない味わいや魅力があります。多少の不具合や古さも、自分たちの手で直していく楽しみと捉えれば、それは愛着に変わっていきます。この記事が、あなたの素晴らしい家探しの一助となることを願っています。


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