田舎暮らしの自給自足は可能?都会を捨て、月5万円で生きる方法

田舎暮らしで自給自足って出来るんかな?現実的な方法を考えてみた! 田舎暮らし

アスファルトから立ち上る熱気、鳴り止まないサイレン、そして、朝の通勤電車で感じる他人のため息。都会の暮らしは、いつしか僕の心を少しずつすり減らしていました。

「もう、お金のためだけに働くのはやめたい。数字に追われる毎日から抜け出して、自分の手で食料を生み出す、そんな確かな手触りのある生活がしたい」

5年前、ぎゅうぎゅう詰めの車内で窓の外を流れる灰色のビル群を眺めながら、僕は本気でそう考えていました。

自足の生活に憧れる

あなたも一度は、そんな風に思ったことはありませんか?

しかし、同時に大きな疑問が頭をもたげます。

「本当に、自給自足だけで生きていけるのだろうか?」

その疑問は、調べれば調べるほど、甘い幻想を打ち砕く厳しい現実に変わっていきました。

この記事では、『現実的に自給自足は可能なのか?』という問いに僕自身が向き合った結果たどり着いた、伊豆での「半自給自足」という生き方のリアルについて、包み隠さずお話ししようと思います。


筆者紹介◆

伊豆に移住して4年。横浜でのサラリーマン生活に終止符を打ち、現在は在宅デザイナーとして1日4時間ほど働きながら、残りの時間は畑や釣りを楽しむ日々を送っています。

僕が会社を辞めて、今の生活を築くまでの物語はこちら↓

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幻想としての「完全自給自足」- なぜ僕たちは挫折するのか

「自給自足」と聞くと、どんな生活を思い浮かべますか? 畑で採れた野菜を食べ、鶏の産んだ卵をいただく。そんな牧歌的な風景を想像するかもしれません。しかし、その裏側には、都会の生活とは全く質の異なる「コスト」と「労働」が存在します。

僕が「完全な自給自足は不可能だ」と判断した、いくつかの高い壁についてお話しします。

見えないコスト①:土地と家にまつわるお金

まず避けて通れないのが、住む場所にかかるお金です。

どんなに山奥で暮らそうとも、日本に住む限り「税金」からは逃れられません。特に大きいのが、土地や家屋を所有しているだけで毎年課税される「固定資産税」です。

もちろん、評価額が一定以下の土地(30万円未満)や家屋(20万円未満)には固定資産税がかからない「免税点」という制度があります。 しかし、そうした物件は、ライフラインが整っていなかったり、大規模な修繕が必要だったりと、安心して住める状態ではないことがほとんどです。

雨風をしのぎ、虫の侵入に怯えることなく眠れる、最低限文化的な生活を送りたいと願うなら、固定資産税の支払いは必須の経費となります。建物を解体して更地にすれば家屋の税金はなくなりますが、今度は土地の税金を軽減する「住宅用地の特例」が適用されなくなり、かえって税額が跳ね上がる可能性すらあるのです。

見えないコスト②:食料を「ゼロから」生み出すということ

次に、食料の確保です。スーパーで野菜を買うのとは、わけが違います。

米作りは、一大プロジェクト

日本人の主食であるお米。これを自給しようとすると、想像を絶する労力がかかります。4人家族が1年間に食べるお米をまかなうには、約1反(約300坪、25mプール1個分)の田んぼが必要と言われています。

機械を使わずに全て手作業で行うことも不可能ではありませんが、田植え、稲刈り、天日干しといった作業には膨大な時間と体力が必要です。 実際には、中古の農機具を揃えるだけでも数十万円の初期投資がかかり、さらに燃料費や肥料・薬剤費も毎年発生します。

肉や魚を得るための、もう一つの「仕事」

タンパク質を確保するのも簡単ではありません。

  • 家畜の飼育:ニワトリ程度なら比較的ハードルは低いですが、それでも小屋の設置や餌代がかかります。豚や牛となれば、広大な土地や専門的な設備、そして何より「命をいただく」という精神的な覚悟が求められます。
  • 狩猟:野生のシカやイノシシを獲るには、「狩猟免許」の取得が必須です。 試験の難易度はそれほど高くないと言われますが、受験料や講習会費用、医師の診断書などで数万円の費用がかかります。 さらに、猟銃を所持するとなれば、銃本体やガンロッカーの購入、警察の許可などで初年度に20〜30万円ほどの費用が必要です。
  • 漁業:川や海で魚を釣るにも、釣り竿やルアーといった道具代、漁業権が設定されている場所では遊漁料がかかります。

僕も伊豆で鹿を獲って食べることがありますが、それは資格を持つ猟師の友人がいるからこそ。自分でゼロから始めるには、相当な覚悟と投資が必要だと痛感しています。

見えないコスト③:エネルギーとインフラの自給

現代生活に欠かせない電気、ガス、水道、そしてインターネット。これらを自給する「オフグリッド」な生活も人気ですが、実現には高いハードルがあります。

  • 電気:ソーラーパネルと蓄電池を設置すれば、電力会社に頼らない生活も可能です。 しかし、エアコンやエコキュートまで含めた家庭の電力をまかなうシステムを組むには、数百万円単位の初期投資が必要になることもあります。
  • 水道:井戸を掘るという手もありますが、掘削費用やポンプの設置、定期的な水質検査など、こちらもコストがかかります。
  • 通信:山間部では、そもそも安定したインターネット回線を引くことが難しい場合もあります。

お金という便利な道具を一切使わずに、これら全てを自力でまかなおうとすると、かえって心も体も疲弊してしまう。それが、僕がたどり着いた結論でした。

お金は、それ自体が目的なのではなく、あくまで生活を豊かにするための「道具」。その道具に支配されるのは本末転倒ですが、意固地になって全く使わないのも、また不自然なことなのです。

僕がたどり着いた「半農半X」という生き方のリアル

完全な自給自足が非現実的だと悟った僕は、方向転換をしました。目指したのは、完璧ではない、ゆるやかな自給自足。近年、「半農半X(はんのうはんえっくす)」と呼ばれる生き方です。

これは、自分や家族が食べる分だけの小さな農業(半農)を営みながら、自分の得意なことや好きなことで収入を得る(半X)というライフスタイルです。

在宅ワーク

僕の場合、「X」は前職の経験を活かした在宅でのデザインワーク。パソコン一台で1日に4時間ほど働き、月に5〜10万円ほどの収入を得ています。そして、残りの時間は畑を耕し、海へ釣りに出かける。そんな毎日です。

都会と伊豆の生活費、比べてみたらこうなった

「月に5万円で本当に生活できるの?」と疑問に思うかもしれません。そこで、僕の横浜時代の生活費と、現在の伊豆での生活費を比べてみました。

費目横浜時代(月額)伊豆の今(月額)備考
家賃85,000円35,000円伊豆では庭付きの古民家を借りています
食費60,000円20,000円野菜や魚はほぼ自給。無人販売所も活用
水道光熱費15,000円10,000円プロパンガスは割高ですが、薪も活用
通信費10,000円5,000円格安SIMに変更
交通費12,000円5,000円車は必須ですが、移動距離が減りました
交際費・娯楽費30,000円5,000円飲み会が減り、自然の中で遊ぶことが増えました
合計212,000円80,000円差額:-132,000円

もちろん、これに加えて国民健康保険や年金、税金の支払いがあります。しかし、生活コストをここまで圧縮できたことで、働く時間を大幅に減らすことが可能になりました。

「お金で解決する」という思考から、「まずは自分で作れないか、調達できないか」と考えるようになったのが一番の変化です。足りない分だけ、稼いだお金で補う。このバランスが、僕にとっては非常に心地よいのです。

心がどう変わったか?時間に追われる生活からの解放

経済的な変化以上に大きかったのは、心の変化です。

都会にいた頃は、常に時間に追われていました。朝は電車の時間に、昼は会議の納期に、夜は終電の時間に。休日はたまった疲れを取るだけで精一杯。

伊豆での暮らしは、太陽と共に始まり、季節の移ろいと共に進んでいきます。春にはタケノコを掘り、夏はトマトやキュウリを収穫し、秋にはアオリイカを釣る。カレンダーではなく、自然のリズムが僕の生活の指標になりました。

資本主義の世界に片足を残しつつも、心までお金に支配されるのはもうやめた。そんな想いから、僕の今の生活は生まれました。満員電車で押しつぶされそうになっていた頃より、ずっと穏やかな気持ちで毎日を過ごせています。

田舎暮らし 乾杯

都会に消耗しない生き方へ – 半自給自足への5つのステップ

もし、あなたが僕のような生き方に少しでも興味を持ってくれたなら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。何もいきなり会社を辞めて、移住する必要はありません。都会にいても始められることはたくさんあります。

ここでは、僕が試行錯誤の末に「こうすれば良かった」と感じる、現実的な5つのステップを紹介します。

Step 1:自分と向き合う(なぜ移住したいのか?)

まず最も大切なのは、なぜ今の生活を変えたいのか、どんな暮らしを本当に望んでいるのかを深く見つめ直すことです。 都会の喧騒から離れたいのか、自然の中で子育てがしたいのか。目的が明確になることで、選ぶべき場所や仕事の形が見えてきます。

Step 2:月3万円の「X」を見つける

いきなり生活費の全てを稼ごうとせず、まずは月に3〜5万円を稼げるスキルを身につけることを目指しましょう。 Webライティングや動画編集、オンライン秘書など、パソコン一台で始められる仕事はたくさんあります。 クラウドソーシングサイトなどを活用して、小さな実績を積み重ねることが自信に繋がります。

Step 3:都会で「半農」を練習する

いきなり広大な畑を借りるのではなく、まずはベランダのプランターでミニトマトを育ててみる。市民農園を借りてみる。地域の農業体験イベントに参加してみる。 小さな成功と失敗を繰り返すことで、自分に農業が向いているのか、何より「楽しい」と感じるのかを知ることができます。

Step 4:現地を訪れ、空気を吸う

興味のある地域が見つかったら、必ず旅行で訪れてみましょう。 観光地だけでなく、地元のスーパーや役場、図書館などを巡り、そこに住む人々の日常を感じることが重要です。自治体によっては「お試し移住制度」を設けている場合もあるので、積極的に活用しましょう。

Step 5:お金の計画を立てる

移住には、引越し費用や当面の生活費など、まとまったお金が必要です。家を借りるのか、買うのか。仕事が見つかるまでの生活費はどれくらいか。具体的な数字に落とし込み、現実的な計画を立てることが、移住後の不安を減らす鍵になります。

まとめ:あなただけの「ちょうどいい」暮らしを見つけよう

完全な自給自足は、現代の日本においては非常にハードルの高い生き方です。しかし、100%を目指す必要はありません。

2割を自給し、8割は買う生活。
5割を自給し、5割は稼ぐ生活。

大切なのは、完璧を目指すことではなく、あなた自身が「心地よい」と感じるバランスを見つけることです。

そして、貯金残高の数字を追い求めるのではなく、いつでも最低限のお金を稼げる「スキル」を身につけておくこと。それこそが、これからの時代を生き抜くための、最も確かな資産だと僕は信じています。

少しずつ労働の比重を減らし、自分の手で何かを生み出す喜びを増やしていく。その先に、きっとあなただけの「ちょうどいい」暮らしが待っているはずです。

この記事が、あなたが新しい一歩を踏み出す、小さなきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

僕の経験を本にまとめました

僕がどんな風に会社を辞め、今の「半農半X」の生活に行き着いたのか。その過程で考えたこと、失敗したこと、そして見つけた希望を、一冊の本にまとめました。

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田舎暮らしと自給自足に関するFAQ

移住するには、貯金はいくらくらい必要ですか?
一概には言えませんが、最低でも生活費の半年〜1年分は用意しておくと安心です。引越し費用、家の契約金、車の購入費なども考慮すると、100〜200万円程度が一つの目安になるでしょう。ただし、移住先の家賃や仕事の状況によって大きく変わります。
移住先の人間関係がうまくいくか不安です。
田舎は都会に比べて地域コミュニティとの距離が近い傾向にあります。地域の消防団や祭り、清掃活動などに積極的に参加することが、溶け込むための第一歩になります。移住前に、その地域のイベントに参加してみるのも良いでしょう。僕の住む伊豆は、移住者も多く比較的オープンな雰囲気です。
虫が本当に苦手なのですが、田舎暮らしは無理でしょうか?
正直に言って、虫との遭遇は避けられません。特に夏場は、家の中に虫が入ってくることも日常茶飯事です。ただし、家の隙間を塞ぐ、網戸を徹底するなどの対策で、ある程度は防ぐことができます。慣れの部分も大きいですが、こればかりは個人の許容範囲によります。
家族(パートナー)の理解を得るには、どうすればいいですか?
移住は一人だけの問題ではありません。 なぜ移住したいのか、移住してどんな暮らしを実現したいのか、あなたの情熱を正直に伝えることが大切です。その上で、移住後の生活設計(仕事、収入、子供の教育など)を具体的に示し、相手の不安を一つひとつ解消していく作業が必要です。一緒に候補地を訪れるのも非常に有効です。
ヤリョさんのように在宅ワークで稼ぐには、どんなスキルが必要ですか?
僕の場合はWebデザインですが、特別なスキルがなくても始められる仕事はたくさんあります。例えば、文章を書くのが好きならWebライター、事務作業が得意ならオンライン秘書、SNSが好きならインスタグラムの運用代行などです。まずは自分の「好き」や「得意」を棚卸ししてみることをお勧めします。以下の記事で、あなたに向いている在宅ワークの診断ができますので、ぜひ試してみてください。

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