※この話は『資本主義の木陰でスローライフ』に収録されています。
畑の話
畑仕事は、重労働だ。なかなかに骨が折れる。
野菜たちがしっかり根を張れるように、よく耕しておかなければならない。
とくに、植え付けが始まる春先は大忙しだ。
耕運機を使えば楽なのかもしれないが、そんなものを使うほど大きな畑というわけでもない。
だから、なんとか手作業で頑張るしかない。
まだ息も白くなるほどの気温にも関わらず、汗が止まらない。だけど、気持ちのいい汗だ。
ダラけきっていた僕の身体も、多少なりとも締まってきた気がする。
そういえば、都会にいた頃はスポーツジムに通っていたっけ。
デスクワークでの運動不足を解消するため。ついでにストレスの解消になればと。
そのために高い入会金を支払った。なのに、すぐに億劫になり、足が向かなくなってしまった。
目標のない運動というのは、当時の僕には苦痛でしかなかった。
だけど、今は目標がある。美味しい野菜を作るのだ。その過程で運動ができている。
当時は、飯を食うために必死に仕事をして、そのお金を使って食べ物を買い、溜まったストレスを解消するためにジムに通っていた。
僕は目的のためにどれだけ遠回りをしていたのだろう。今更ながら痛感する。
もちろん手に入れたいものは、お金を使って手に入れた方が効率のいいこともある。
だけど、何かを手に入れるために遠回りしていることだってたくさんあるんじゃないだろうか。
何より、自分で育てた野菜を食べられるというのは、この上ない喜びだ。 我が家の畑で採れたトマトは、売っているトマトより小ぶりだし、色も悪いし、甘くない。けど、悪くない。
ヤリョによる解説
スポーツジムで鍛えたような不自然な筋肉が好きじゃない。
筋肉がムキムキすぎると、かえって不健康に見える。
そんなにムキムキじゃなくたって、必要に応じて付いた筋肉の方が「機能美」という感じがして素敵だ。
『お金』だって一緒。
不自然にたくさん持たなくても、必要最低限あればいい。
何でも一度お金を介さなくても、手に入るものだってたくさんある。
「まずは、お金を手に入れてから考えよう」という現代人特有の考えに違和感があったので、この話を書いた。
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